最も印象的だったトム・ワトソンのキス 2010年7月19日月曜日 13:13


 今年の全英オープンで、世界中のゴルフファンが期待していたのがトム・ワトソン活躍でしょう。過去5度の全英オープンの優勝、昨年は最終ホールでボギーを叩き、プレーオフに持ち込まれ、負けてしまった59歳の天才ゴルファーへの期待は半端じゃありませんでした。しかし猛烈に体力を奪うスコットランド特有の風に天才も負けてしまったかのようにバーディーを奪えませんでした。
 予選落ちが決定的となった2日目、18番ホール。ティーショットの後全員が渡るスウィルカンブリッジに何とワトソンがいきなりキスをしたのです。長い間お世話になりました、とばかりに渡る手前に右側に石造りの欄干にチュっとしたのです。4、5mの川幅にかかる橋ですが、この橋は、世界中のゴルファーが必ず記念写真を撮る橋なのです。ジャック・ニクラウスが引退を決め、最後の全英オープンになった際も涙を流して、この橋を渡りました。橋の上で暫く涙も拭かず帽子を観客に振っていました。三平が目の前で見たのはアーノルド・パーマーが最後の全英オープンとなった時のこの橋での記念撮影でした。また全英オープンの優勝者やダンヒルカップの優勝者は必ずこの橋の上でカップを持って記念写真を撮ります。もちろん三平も行った時は必ずこの上で写真を撮ります。いつもカメラマンにむりやり頼んで撮影してもらいます。それぐらい世界中注目の橋なのです。
 実はこのスウィルカンバーンは、ゴルフの歴史にとって重要な小川なのです。リプレースというルールができたきっかけとなったのがここでした。ゴルフ史上初めてボールに触ることができた事件です。300年前のことだと思いますが、地元の人達は、この小川で洗濯をしていたのです。そして風が強いので、芝の上に洗濯物を干していたのですが、そこへゴルフをしていた下手なゴルファーの亭主達がボールを曲げ、洗濯物の上にボールが転がっていくわけです。ところが当時はボールに触ることは絶対禁止、しかしこのまま打っては怖いカミサンに怒られる、はたと困ったしまい、みんなで協議し、リプレースというルールが生まれたのです。その現場となったのがこの小川なのです。またウォーターハザードなどのルールができたのもこの小川です。
 そういう意味も含め、この小川には数々の歴史が刻み込まれているのです。それに対しお世話になりました、と言っているかのようなワトソンのキスでした。三平も何度も渡ったことがあるこの橋でのシーンに胸が熱くなるのを感じました。

ラベル: